鈴木メルヒェン夫妻の恋文

触れ合えない、抱き合えない。 それでも、夫婦やってます。 現実世界を生きる妻と、 精神世界に生きる旦那の 見えない絆とラブレター。

2017-06

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嫁が旦那を叩くとき

いよいよ本当に最初の締切まで一週間をきって、嫁もピリピリしてきた中で買い物に連れて行ったのだけれど、ゆっくりお店を見て回る間、千里はなかなか笑ってくれなかった。
手芸屋さんで綺麗な布があると言って見せたけれど、「へえ」程度しか言ってくれなかった。
普段だったら「かわいい!いくら?うわ高っ、早くしまえ!」くらい反応してくれると思うのに。

必要なものをさっさと買って、用事を済ませてしまった。
息抜きの買い物のつもりで連れてきたのに、買ってきたのはほぼ全部イベントにいるものだった。
洋服の一着くらい買えるなけなしのお金なら、なんとか持ってたのにな。

そんな雰囲気だから、口論にもなった。
口をつくのは仕事の話の、本物の仕事中毒の嫁らしいっちゃらしいけれど。

しかし苛立ったのだろうか、何か癪に障ったのだろうか。

あまりにも急だったから、おれは構えるもなにもなく。

頬を叩かれた。
いきなり。

・・・気性が荒いことくらいは知っていた。
けど、まさかと思った。
何がって、こんなに痛く叩いてくるとは思ってなかったからだ。
じゃれてくるレベルの叩き方ではなくて。
本気でよっぽどの怒りでもこもっているかのような平手打ちだった。

怒るとかえって悪く刺激することは目に見えていたけれど、おれはわざと振り向かないで、感情を打ち消した声で訊いた。

「・・・叩かれる理由がわかんないんだけど」

そのとき目を合わせていなかったけれど、返ってきた声は震えていた。
「ごめん・・・なんで叩いたのか、わかんない」

言い訳ではないらしいな、と思って振り返ってやると、千里はもう泣きそうだった。
「ごめん、・・・ごめん嫌いにならないで」
腕にすがりついてきて、そのまま本気で泣き出しそうな勢いだったので、慌てて抱きとめた。
「ここで泣いちゃだめだよ。おうち帰ったらにして」
「わかってる・・・わかってるけど、ごめん」
「それはいいから。ストレス溜め込みすぎ。」
「・・・」
「大丈夫、お母さんの前でなら、おれがお前のふりしといてやるから」
「・・・離れていきそうで怖いから離しちゃやだよ」
「信じてもらえないほうがよっぽど辛くて離しちゃいそう」
「あ・・・ごめん」
「苛々しちゃう気持ちもわかるから、いいの。けど息抜きするときはまじめに息抜きして」
「・・・」

どうやら本当に何の理由もなく叩いてしまったらしい。
そのあとにも、「やったのが夫婦逆だったらとんでもない暴力になってた」と説教たれてしまったのだけれど、そのくらいしないとわかってくれない嫁なので、しかたない。

とりあえずいきなり叩かれるのはもうごめんなので、
「叩きたくなったらせめて一言ことわってからにして」
って言っておいたのですが、どうも罪悪感が抜けなかったようで、
一心不乱に作業をしてごまかしていた姿がいかにも千里の誤魔化し方だなーと、陰では笑っていたのだけれど。
飲み物も持たずに4時間くらい、ずっと描いてた。
ときどき行き詰っては、歌ってた。
行き詰って歌うのはいつものことだけれど、今日はひときわ大きな声で歌っていたので余程のストレスだったのだろう。
作業の片手間とは思えないような歌いっぷりで、「水性ペンの線に唾がとんでにじんだ」と焦っていた。幸い、キャラクターを描いている線は耐水性のペンなので無事だったけれど、コマの枠線が被害に遭ったらしい。

絵を描く以外にも大事な作業があったので、それもやっていた。
イベントで本を買ってくれた方にお菓子を配布するということで、可愛い袋に店を4軒ハシゴして底値でゲットしたカントリーマアムなどを詰めて、パッケージにしていった。内職みたいな。
イベントのおまけお菓子どばー。
これをやってしまう時点でウチは赤字ですを明言している。
買うときに「これおいしそう」と言っていたチョコレートも、おれが「おいしそうだね」と自分で食べる気満々で買わせたのに、「私が食べるんじゃないんだけど」といってカゴに入れていた。

ひとつひとつに、4個のお菓子(うち2個はカントリーマアム)を詰めていって、小袋が15個できた。ついでにハロウィンの余りの袋でもう2個、お隣さんへの挨拶のお菓子もつくったのだけれど。
イベントおまけお菓子、この袋のは15個。
お菓子を詰めてる間に、千里にこんなことを言われた。

「いま私は何を詰めてると思う?」
カントリーマアム
「・・・」
「・・・ペコちゃんビスケット
お菓子を詰めてると思ってるのか」
「少なくとも眼前に広がってるのはお菓子の海
馬鹿野郎!食い意地の張ったやつめ」
「いやあの、意味わかんねえ」
お客様への感謝を詰めてるんだ」
「・・・顧客満足度か」
「なめんなよ零細企業
「・・・」
おまけお菓子、4種類はいってます。
そんな嫁さんのお客様への感謝の品の話。
零細企業っていうのは要するに非常に非常に規模のちいさなちいさな企業という意味で、つまりはセナコ屋のことを親に言われたらしいです。
まあこんなお菓子のおまけを本一冊のために用意できるのはセナコ屋ならではだと思ってください。ふつう貰ってもカントリーマアム1枚です。

そんな食い意地の張った旦那より、嫁さんへ恋文を。


拝啓 鈴木メルヒェン瀬名子/千里様

貴女との日々は、いい意味で飽きないけれど、けっこう重労働なときもあるので、旦那としての力量の見せどころだと思っています。

正宗は鈴木家みんなのものなので、二人占めはよくないけれど、もとはといえばおれが目を付けていたので、そう簡単にゆずれないというのが本音です。映理子も「すこし噛んだ」らしいので、余程狙われてますね。

おれも絵や文章、手芸など形の違うことをしていても、貴女と同じように「表現者」ですので、お互い文句つけだすときりがない人種どうしなので、おれはただの読者ではなく、貴女の世界の「関係者」でありたいです。

あいまいな感情表現の中で、貴女が示してくれた「美味しい」は大きな励みになりました。
別におれの中には、貴女が「これが好きだからおれも好きになった」ものはないです。
偶然の一致の重なりです。
漫画のことも、正宗のことも。
おれが好きなものを、貴女も好きだっただけのことです。

一緒のものが好きなら、一緒のことで笑い合えるしあわせを、おれは噛みしめていたいです。
貴女といっしょに。

   ――鈴木メルヒェン刃

  二〇一〇年十二月六日

                 敬具

2010年12月6日 旦那から嫁へ

嫁さんの無茶が年末まで続くのかと思うと、ぞっとします。
そのたびにおれが支えないと、もうセルフコントロールなんて全然な千里なので。

でもお客さんを大事にする気持ちとか、何かを大事にする繊細な心は大事にしたまんまでいて欲しい。

今日も、帰りの車窓から景色を見て、こんなことを中で呟いていた。

「あそこに生えてる苔もね、草も、みんな頑張って生きようって、あそこに根付いてるの。だから本当は、人間なんかに生まれて、生きるだ死ぬだ言ってる私は、無礼者だよね。」

旦那をぶっ叩いて15分経ったか経たないかくらいに言った、嫁さんの一言。

優しいからこそ、なの?
物を壊したりするのはよくないってわかってるから?
だから、敢えておれを叩いたのかな?
それとも咄嗟だったから、相手は見えてなかったかな。

わからないけれど。
嫁が買い物の途中、唯一笑ったひとこま。
車から降りようとしたら、小鳥がすぐ横を走っていった。

「見た?鳥が顔見世してくれた」

たかが通りすがった鳥に、それだけの感情。
どこまでお前は繊細なの?
こんな壊れやすいもの、どうやって持ったらいいの?

戸惑った。
けれど、支えた。
いまも。
こわさないように、そっと。



鈴木メルヒェン刃(旦那)
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鈴木メルヒェン刃・瀬名子

Author:鈴木メルヒェン刃・瀬名子
鈴木メルヒェン夫妻です。「ちゃんとお嫁にいくまで」のはずが、いつのまにか想いがつのりすぎて、ご挨拶の末、お父様からも公認をいただいた旦那・刃(ジン)と嫁・瀬名子(セナコ)の夫婦漫才のような日常と、愛し合えた日々の軌跡の恋文日記。現実世界の嫁と、精神世界の旦那という、近すぎて遠すぎる哀しい距離さえも、喜びで消し去れるように。隣にいるアナタが、幸せでありますように。そんな願いのこもった、二人のブログです。

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